過疎の人
一善 |
というわけで 話して欲しいのですがいいですか?
※妻の名前はゆかりといいます。
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縁 |
(笑いながら)ハイハイ 協力させていただきますよ。
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一善 |
(笑いながら)ありがとう では早速質問しますね。
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縁 |
ハイどうぞ。
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一善 |
私たち 50年前に結婚したんだが あなた結婚を決めるとき 将来田舎のお寺で暮らすことになると考えていたの?
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縁 |
考えていたよ。父が「あんた 本当に島根県でいいのかね あの地でいいのかね?」と念を押したとき あまり深く考えないで 「ウン いいよ」といったことを憶えてるよ。
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一善 |
へえーそうなんだ。それで今の現実をどう感じているの?
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縁 |
はっきり説明できないのだけれど 「いまここ」で不満とか満足とかいう思いが浮かぶことはないよ。
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一善 |
ウンウン その気持ちわかる わかる。
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縁 |
行こうと思えば行きたいところにも行けるし する仕事も楽しいから不満とか満足とか考えることはないのよね。
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一善 |
あぁ~それ聞いて安心したよ。たぶんあなたは ここの暮らしはいやだといわないだろうと思っていたけど 出ていくほどの不満はないんだね。
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縁 |
(笑いながら)逃げだそうか。朝起きたらいなくなっているかもわからないよ。でも安心してよ お葬式を出してあげるから。どこで暮らしても その人の気持ち次第じゃないかと思うよ。
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一善 |
ということは その場そのときを大事にしてるということなんだ。そういってもいいかな?
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縁 |
う~ん うまくいえないけど そうだと思うよ。自分の暮らしの中で何か楽しみを見つけたらいいと思う。私は人生の後半になってから 仕事をする歓びとか花を育てる歓びが見つかって ほんとによかったと思う。
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一善 |
ということは あそこの家の95歳のおばあさんが 終日畑に出て 売るわけでもない野菜をつくっておられるのも 耳が不自由でもお寺参りをされるのも歓びなんだよね。
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縁 |
ほんとにすごいよねえ あの人は。過疎なんて関係ないことだよね。
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一善 |
ということを結論にして 今回はここらで終わりにしますよ ありがとう。
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