お尋ねしたいことが
お参り先のお客さまが 「今日はあなたにどうしてもお尋ねしたいことがあるので」と あいさつが終わるか終わらないうちに話し出されました。
そのお方の様子は真剣で 思わず身構えてしまいました。
心臓と肝臓の病気をお持ちのお方で 何度も大きな手術をされたことを聞かされて知っていたからです。一年に二度三度お会いするのですが お目にかかるたびに弱っていかれるように感じていました。
質問は「悟りというのはどういうことなのでしょうか」ということでした。
「あまり長く生きられないことは悟っています。身辺の整理もほぼ終えました。ただ残された家内のことについて心配が残っていて悟れないのです。いったい悟りの境地というのはどういうことなのでしょうか」といわれました。
その方の思いが響くように 寄り添うようにしてお聞かせいただきました。
読経を終えた後 「悟りとはどういうことなのか 私にはわかりません。でもお話を聞いて思ったことは 悟れないことも含めて すでに悟っていらっしゃると思います」とお話ししました。
「『あなたに代わって あなたの悟りを完成しているから 一緒に生きよう』と 姿を現してくださった如来様と共に生きるばかりです」といわれた親鸞さまのおことばをお話ししました。
「ありがとうございます」とお礼をいわれたとき 私も一緒に生きていただいているという思いがして とても満たされたひとときになりました。