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過疎四苦八苦
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「ごしんさん」

過疎四苦八苦

「ごしんさん」

お亡くなりになった人を追憶する機会はしばしばあります。通夜とかお葬式、その後に営む法事の場などでは、ご家族のみなさんや地域の人々が一緒になって思い出を話します。

一緒に暮らした人や一緒に働いた人々には、ひとつの目的が共有されていて思い出話はたくさんあるわけですが、地域の住民という関係であれば共通した思い出が沢山あるとはいえません。

しかし故人を親兄弟として見ていた人々や上司とか同僚として見ていた人たちの場合と違って、一人の人間として見る見方、しかも一生という時間と環境とあわせながら追憶するこは出来ます。

昨日通夜を営んだ故人は、93歳のご婦人でした。そのお方は、通りがかりの立ち話の後の別れ際でも、「ごしんさんによろしくおっしゃって下さい」と必ずいわれていました。

「ごしんさん」とは私の家内のことです。奥さんとか坊守さんとかいわずそういわれていたのです。

「ごしんさん」という敬称を話される人を私は二人知っていました。その最後のお方がお亡くなりになられ、たぶん私の周囲から「ごしんさん」が消えると想像しています。

幼いころの躾として身につけられた方言など生活のことばが周囲から次々と消えていく中にあって、大事に使い続けて下さったお方でありました。

古くなった道具と同じように、古くなったことばも捨てられます。映像や記録としては伝わりますが、生活のお現場で伝わるぬくみや、そのことばをさりげなく使っていたやさしさは霧散します。

そういう生き方の事実を追憶して、故人のお人柄の断面を追憶してお話ししました。